マネジメント層必読!株式会社ソウゾウHR責任者が語る|生産性が高い企業のカルチャーと取り組み

メルカリグループの新規事業である「メルカリShops」を運営している株式会社ソウゾウのHR責任者笹倉宙希氏と、WEIAの理事であり企業の労務戦略を専門にしている宇都さくら弁護士が、職場環境やマネジメントに関して対談しました。

 

株式会社ソウゾウのHR責任者笹倉宙希氏の画像

株式会社ソウゾウ Corporate & HR Ddirector 笹倉宙希氏

 

※この対談記事は以下のような課題をお持ちの方におすすめです。

  • テレワークがうまく機能していない
  • 働き方改革への対応がうまくいっていない
  • テレワークにおける管理職の働き方に悩んでいる
  • 職場のハラスメント問題に悩んでいる
  • 部下とのコミュニケーションに悩んでいる
  • 職場の生産性が低い

 

対談者プロフィール

笹倉宙希氏

株式会社ソウゾウのHR責任者笹倉宙希氏の画像

半導体メーカー営業等を経て30歳でキャリアチェンジし、インターネット業界へ。2009年、㈱出前館で経営企画・IRを担当。その後、2011年に株式会社ディー・エヌ・エーへ入社。管理会計を軸としながら事業管理部長、経営管理部長、経理部長、コンプライアンス・リスク管理部長を経験。2018年、子会社のSHOWROOM(株)に出向し取締役として管理部門を管掌。2018年9月、メルカリに入社し管理会計、財務会計、ガバナンスなどを管掌。2021年7月からソウゾウにジョインしコーポレートとHRを管掌。

宇都さくら氏

企業の労務戦略専門弁護士宇都さくら氏の画像

弁護士法人マネジメントコンシェルジュで、人事・労務などの企業法務案件に注力している。グローバル化、技術の進歩、IT化、法改正、ウイルスの流行等、常に変化する外部環境に伴い、働き方が多様化する中で、明瞭な対応策を伝え、予防労務を実現することが、企業の生産性向上に繋がるとの想いから、企業の最適な労務戦略の提供に従事。一般社団法人労働環境改善協会理事。

 

リモートワーク|日本全国どこから働いてもよい制度

 

宇都:本日は笹倉さんに時代背景や意識の変化、ハラスメント問題、労働環境の改善について3部構成でインタビューさせていただきます。まずコロナの影響を受けて、御社では働き方の変化はありましたでしょうか?

 

笹倉氏:弊社の設立が既にコロナ禍の最中であったので、メルカリグループとしての動きをお話しますね。

これまでは「原則出社」を会社のルールにしていたのですが、コロナが流行りだしたことにより2020年2月3月あたりには早々に「リモートワーク」へ舵を切りました。最初は走り出しながら様子を見るという形でしたが、結果として、生産性が高まったというのが現場の声としてあがりました。「集中して作業ができる」といった声が上がり、アンケート結果においても生産性が上がったという回答が多くあったと聞いています。

また、コミュニケーション面でも、「リモートワーク」でも仕事を進めていけるという確信が持てたので、昨年から全社的に「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」という制度を導入し、日本全国どこから働いてもいいですよという方針に振り切りました。

 

宇都:早いタイミングでリモートワークへ舵を切る意思決定をされているのは、とても素晴らしいですね!

御社では生産性が上がったというお話でしたが、一方で他社では生産性が下がったという声も結構聞きます。リモートワークだと若手社員が先輩社員に質問しにくいという声や、先輩社員も若手社員にオンラインで教えるというのが難しいという声もあります。リモートワークでも生産性を上げるために、例えば御社では仕事が1人で完結できるような中途社員しか採用しないといった組織作り等を行っているのでしょうか。

 

笹倉氏:弊社ではコミュニケーションツールとしてSlackを使っているので、社員同士は気軽にコミュニケーションをとっています。ハドルミーティングの機能を使えば気軽に会話もできますし、分からないことを聞きづらいから仕事が進まないといった声は聞いたことないですね。ただし、もっと雑談をしたいという話はよく聞きます。

 

リモートワークだからこそタッチポイントを増やす

 

宇都:それでは、リモートワークでコミュニケーションは具体的にどのように行っていらっしゃいますか?

 

笹倉氏:弊社の取り組みで言うと、意識的にタッチポイントを増やしています。毎日午前中に全員で朝会を行い、毎日のKPIの確認や連絡事項の共有を行っています。

また毎週オールハンズを実施しており、ここではCEOからのメッセージやOKRの進捗の発表を行っています。これらは、会社の動きに関する社員の情報量を等しくするために実施しています。また隔週になりますが、TGIF(Thank God It's Friday)をオンラインで実施しています。希望者には美味しい宅配料理が自宅に届くように会社で一括して注文するということもやっています。

 

宇都:リモートワークでは、社員がついつい働き過ぎてしまうというケースもあるようです。オーバーワークの対策はどのようにしていらっしゃいますか?

 

笹倉氏:組織サーベイを全社員に毎月実施しています。時間としては10分位で回答できる内容です。

その結果を人事や経営陣が分析しながら、懸念のある場合にはメンバーと対話等を行いフォローしていくという運用をしっかり回しています。弊社の現状でいうと、新規事業立ち上げという熱量のあるタイミングということもあり組織コンディションもよいためフォローが必要なケースはそう多くはありません。しかし、100点ということはないので今後も随時改善はしていきます。

 

業務管理|OKRの運用でやるべきことを明確に

 

宇都:リモートワークだと「業務の進捗管理がしづらい」「成果が見えにくい」「社員の評価が難しい」という管理職の声もお聞きするのですが、御社ではどう対応していらっしゃるのでしょうか?

 

笹倉氏OKRの運用をしっかり行っているので進捗管理や成果の把握という点については良い形で運用できていると認識しています。

会社で定めたオブジェクティブをもとに、各チームや各個人ごとにOKRを作成しています。会社のOKRから個人のOKRまでツリー構造で繋がるように設計しているため、全員が自分たちのやるべきことや進んでいく方向性が明確なので、成果が見えにくいことはないと思います。

また、OKRは基本的には70%が合格目標という仕組みとなっていますので、OKRの達成度合いと人事評価や報酬制度は直接的には紐づけておりません。OKRの達成に向けて社員がどのように努力したか?どのように工夫をしたか?というプロセスの部分に主に着目して評価を行っております。ここに関しては、オンラインとオフラインで特段変わったということはないと認識しています。

 

経営会議の議事録が誰でも見られる状態

 

宇都:業務管理や組織作りの面で、他に意識していることはありますでしょうか?

 

笹倉氏:会社全体として発言がしやすい環境をつくることを意識しています。いわゆる心理的安全性を確保するというものですね。

弊社は、ダイバーシティ&インクルージョンの観点からも、色々なバックグラウンドを持った人の意見を練り合わせて結果を導いていくということを重要視するカルチャーです。そのためいろんな人の意見が聞ける環境作りに気を付けています。独自の取り組みとしては経営会議のドキュメントを誰でも見られるようにしています。Google Docs(クラウドのドキュメント)を使ってアジェンダや議事録を作成しているので、全員がリアルタイムで見られるような環境を整えています。

更に、経営会議のレギュラーメンバーは決まっていますが、アジェンダを持ち込みたい社員がいれば誰でも議案を持ち込んで提案し議論することができます。経営会議のレギュラーメンバーもこういう社員の話はきちんと聞いた上でディスカッションを行うので、形式的にも実態的にも誰でも経営会議に参加できる仕組みを作っています。

 

宇都:色々なバックグラウンドの方がいると組織をまとめるのに苦労されると思いますが、気を付けていることがありますでしょうか?

 

笹倉氏:組織を作る際は向かうべきゴール設定に対してみんなが納得できる状態を作ることを重視しています。経営会議などの議事録をオープンにし、みんなで積極的に議論をする。向かうべきゴールに対して全員が腹落ちし、納得した状態で前に進むということを意識しています。

 

宇都:経営会議の内容をオープンにするのはリスクもあると思いますが、いかがでしょうか?

笹倉氏:人事やインサイダー関連のものはオープンに出来ないので、議事録はオープンに出来るものと出来ないものに分けています。

ただし、事業の方針に関わることは基本的にオープンにしたいと思っています。また、社員の中には理解が難しいと感じる事項があったり、テキストデータだけだと意図が伝わらないケースもあります。そのため、経営会議後にメンバーに対して上長が説明する機会を設けることにより、リスクヘッジを行っています。

 

採用戦略|プロダクトに共感しているか?熱量はあるか?

 

宇都:それでは、次は採用戦略について教えていただけますでしょうか?

 

笹倉氏:採用において、候補者の方のスキルセットは比較的に評価しやすいと考えています。その分野の専門のマネージャーが話をすればどのようなスキルセットを持っているかは評価しやすいと思います。

一方、カルチャーフィットの部分は見極めることが難しいと考えています。そのため面接時にはバリューに即した質問をしています。メルカリグループでは「Go Bold(大胆にやろう)」「All For One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」といったバリューを掲げており、弊社では更に「Move Fast(まずはじめよう)」というものを掲げています。面接ではこれらのバリューに関して応募者の過去の体験(「今までで一番Go Boldだった経験はなんですか?」等)について質問することによりミスマッチが防げているかと思います。

また、弊社の採用ではプロダクトへの共感も特に重要視しています。メルカリグループの事業はフリマ事業ということで循環型社会の実現という方針をかかげています、その中でも弊社が扱っている「メルカリShops」はその中でも特に社会的意義の大きいサービスだと思っています。弊社ではメルカン(オウンドメディア)や他社の媒体で情報を多く発信しているので、面接で話をすればプロダクトに本当に共感しているかどうかは分かりますし、プロダクトに対して熱量があるかないかも分かります。面接ではこういった面も評価しています。

 

よい労働環境には優秀な人が集まる

 

宇都:次は労働環境の改善と生産性の向上をどのように結び付けているかについてお伺いしたいと思います。労働環境の改善およびバックオフィスの仕事がどのように生産性の向上に繋がるのかについて、ご意見をお聞かせいただけますか?

 

笹倉氏:労働環境の改善がどのように生産性に繋がるかについては、良い労働環境に人が集まり結果として生産性の向上に繋がっているのではないかと考えています。

弊社ではSick Leaveや育休といった制度も労働環境と考えていますが、単に制度があるだけでなく積極的に制度を使っていこうというコミュニケーションをしています。時短勤務だったり、子供のお迎えの時間の中抜けだったり、各自に状況に合わせた多様な働き方を許容するカルチャーになっています。これにより社員みんなの不安が解消されて、思いっきり働くことができて、その結果、優秀な人が残ってくれていると感じています。

 

労働環境|All For Oneのカルチャー

 

宇都:中小企業では労働環境をよくしていきたいけど人数不足のため、なかなか実現できないという声を良くききます。突発的に出勤したり、残業を依頼するケースが多く見受けられますが、御社ではどのように対応していらっしゃるのでしょうか?

 

笹倉氏:新規事業のためやりたいことは山のようにあるので、人は常に足りないです。

ただ人が抜ける場合は仕事の優先順位を変えるなど最適化を図ったり助け合ったりしています。仕事が出来ない場合は出来ないと割り切ったりもしています。会社として「All For One」というカルチャーがあるので、誰かが休む場合は最適化するように切り替わるカルチャーで対応しています。

 

宇都:ありがとうございます。みなさんで支え合ってということですね。しかし、例えば経営陣が長期で休む場合、意思決定が出来ないなどの理由でプロジェクトの進行が遅くなるというようなことは発生していないのでしょうか?

 

笹倉氏:弊社では経営陣が長期で休むケースはまだ発生していませんね。メルカリグループとしての事例を見ると、権限移譲したり会議体で物事を決定するなど俗人化しないようにしているので、経営陣が休みを取っても、意思決定自体は遅延することはないと思います。

 

カルチャーをいかに根付かせるかがバックオフィスの仕事

 

宇都:バックオフィスの仕事がどのように事業部の仕事をサポートし、生産向上に繋がっているか教えていただけますか?

 

笹倉氏:毎月、中途入社でかなりの数が入社しています。新入社員に対し面談を行うなどサポートは手厚いと思います。

上長に対して直接言いにくいことなどもHRの方で情報をきちんとキャッチしてフォローしていくということは丁寧に行っています。カルチャーの浸透はかなり意識しており、カルチャーが根付くための情報発信や施策等は積極的に行っています。例えば、採用に力を入れるとなった時に採用専用のチャンネルを作成し、リファーラルで採用が決まった際にはリファーラルを出した社員をチャンネルで取り上げてバリューの体現に関わる形で賞賛するといったことをやりながらカルチャーを根付かせるようにしています。

 

宇都:他に社員のモチベーションを高める施策は実施していらっしゃいますか?

 

笹倉氏:日報を書いて社員で共有するというのをやっています。

日報には業務に関係のないことも記載してあり、例えば「花粉症が酷くて」という日報に対して「この薬が効くよ」といったコメントが付いたりします。業務外の欄しか見ていない社員も結構多いですが、社員間でコミュニケーションが取れているので社内によい影響を与えていると思います。またシャッフルランチといって他部署の人や役職を超えてシャッフルしてランチという制度を導入して普段関わりのない人とも関われる環境を作っています。

 

宇都:特に良かった施策や今後も続けていきたい施策はありますでしょうか?

 

笹倉氏:採用に貢献した人を賞賛する仕組みは今後もずっと続いて行くと思います。また、最近ノベルティとしてTシャツを作って社員に配ったら喜ばれました。こういったノベルティの作成は今後も続けていくと思います。

 

宇都:今回は、株式会社ソウゾウのHR責任者笹倉宙希氏に『生産性が高い企業のカルチャーと取り組み』についてお伺いすることができました。

笹倉さん、本日はお忙しいところ貴重なお話をありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です